だんらん〜おまけ〜



「貴方は甘すぎます!」

食事の後片付けをルルーシュとロロに任せて、ヴィレッタはジェレミアを前に、説教をしていた。
その周りには、かなりの数のアルミ缶が転がっていることから、程よく酔いが回っていることは間違いない。
管を巻き始めたヴィレッタの標的にされたのでは敵わないとばかりに、鍋が終わるとすぐに、蜘蛛の子を散らすように皆テーブルを離れたのだ。
逃げ遅れたジェレミアが、ヴィレッタに捕まったのである。
要領のいいC.C.は、既にどこかに姿を消していた。

「貴方は大人なんですから、ルルーシュに対して、もっと毅然とした態度をとるべきです!」
「し、しかし・・・」
「しかしではありません!あんな生意気な子供に顎で使われて、貴方は悔しくないのですか!?」
「いや、別に・・・悔しくはないが?」
「あぁッもう!・・・貴方という人はどこまで甘いんですか!?もう少し大人の威厳を持ってもらわなければ、困ります!」

ジェレミアの反応に、酔ったヴィレッタは苛立っている。

「ここは一つ、ビシッと・・・」
「では、お前がビシッとルルーシュ様に意見を申し上げてみたらよいではないか?私は嫌だ!」
「そ、それは・・・」
「どうだ?できまい。自分ができないことを人に押し付けるのは良くないことだぞ」
「ううッ・・・」
「大体、ルルーシュ様に逆らったりしたらどんな仕返しをされるのか、お前だってわかっているのだろう?」

ルルーシュの性格の悪さを、ヴィレッタは知っている。
性格が悪いだけでなく、執念深いことも、重々承知していた。
その上、頭の回転が速く、奸知に長けているのだから、到底勝ち目はない。
ジェレミアがルルーシュを恐れるのは、当然のことだった。
しかし、ヴィレッタは、ルルーシュの言いなりになっているジェレミアが、どうしても許せなかった。
多少傲慢ではあったが、常に威厳と自信を持ち、部下に対して厳しい態度を崩したことのない嘗てのジェレミアに、ヴィレッタは敬服していたのだ。
それが今は完全にルルーシュの尻の下に敷かれている。と、言うよりは、単なる道具としていいように使われているようにしか、ヴィレッタの目には映らなかった。
そもそも、ヴィレッタの目から見たルルーシュは、人間味が欠落しているようにも感じられる。
表面に出す感情はすべて偽りで、腹の底ではなにを考えているのかが、まったく読めないからだ。
ジェレミアが、どれだけルルーシュに誠意を持って尽くしたところで、それが報われるとは思えない。
ルルーシュにいいように、利用されるだけ利用されて、用済みになれば捨てられるような気がしてならないのだ。
そうなったら、ジェレミアはどうするのだろうと、ヴィレッタの胸に不安が過ぎる。
遣り切れない想いに捉われて、ヴィレッタの不安と苛立ちは、そのまま目の前のジェレミアにぶつけられた。

「ジェレミア卿・・・貴方は本当にこれでよろしいのですか?」
「これで、とは?」
「貴方は、ルルーシュに・・・利用されているのです!」
「そんなことは、お前に言われるまでもなくわかっている・・・」
「・・・そ、それなら、なぜ!?」
「私には私の事情があるのだよ」

そう言ったきり、ジェレミアは口を噤んでしまった。
これ以上は口を挟むな、と言う事なのだろう。
ジェレミアの言う事情がなにかまでは知らないヴィレッタだったが、胸にわだかまる遣り切れない想いは変らない。
空になりかけた自分のグラスにビールを満たして、新しい缶のプルタブを開けた。
そして、それをジェレミアの目の前に突き出した。

「お口に合うかはわかりませんが、どうぞ」

言われて、ジェレミアは困ったような顔をしている。
アルコールは嫌いではないが、ルルーシュの目を気にしているのだ。
それが証拠に、後片付けの済んだルルーシュがいる部屋の様子を、ジェレミアはしきりに窺っている。

「息抜きも必要だと思いますが?」
「し、しかし・・・」

そうして、またジェレミアは、ちらりとルルーシュの部屋の扉へと視線を向けた。
ヴィレッタは、それを焦れったそうに見つめている。

「いい加減、その過保護はお止めください!甘やかしすぎは子供のためにもよくありません!!」
「だが、ルルーシュ様に万が一のことがあったら、私は・・・」
「大丈夫です。学園内の監視体制は万全です。もしも怪しい者が侵入したらすぐにこちらに報告が来るようになっています」

そう言って、尚も渋るジェレミアの前に、缶ビールをドンと置いた。










夜が更けて、日付はすでに翌日に変っていた。
ルルーシュの寝室の扉が、音もなく開けられて、黒い影がするりと入り込む。
気配を消したその影の侵入に気づくことなく、ルルーシュは熟睡していた。
もしもルルーシュがその気配に気づいて目を覚ましたとしても、侵入者はジェレミアなのだから、ルルーシュは警戒すらしなかっただろう。
ルルーシュは、侵入してきたジェレミアに背中を向ける形で眠っている。
その寝顔に顔を近づけ、ルルーシュの規則正しい寝息を窺って、ジェレミアは緊張した面持ちでゴクリと喉を鳴らした。
恐る恐る、ゆっくりと、ルルーシュの白い頬にくちびるを近づけて、眠っているルルーシュの身体に腕を回す。
柔らかく抱きしめながら、頬にくちびるを押し当てると、それに気づいたルルーシュの瞼が、静かに開いた。

「ジェレミア・・・?」

覚醒しきっていない意識で名前を呼ばれて、ジェレミアの鼓動が跳ね上がるのと同時に、自分を抑えていた理性が掻き消えた。
主君に名前を呼ばれたのにも関わらず、返事を返すことも忘れて、抵抗されることを恐れたジェレミアは、腕の中にあるルルーシュの身体を強く抱きしめると、夢中でくちびるを重ねた。
強引に舌を捩じ込んで口内を貪ると、ルルーシュは息苦しそうにそれから逃れようと首を振る。
それを逃がさずに、ジェレミアは執拗にルルーシュの舌を追いかけて、くちびるを強く吸い上げた。
逆の立場で、ルルーシュに翻弄されることはあっても、ジェレミアがルルーシュの承諾を得ずに、強引に行為を推し進めることは皆無と言っていい。
そんなことをすれば、後でルルーシュにどんな仕返しをされるのかを、ちゃんと理解しているからだ。
しかし、アルコールに侵されたジェレミアの脳は、冷静な判断を失っている。
自分の欲求を満たすことばかりに気をとられて、その後のことまでは思考が回らなかった。
自制心を保つために必要な理性は、既になくなっている。
力の加減すら、わからなくなっていた。
ルルーシュの上にあるジェレミアの重みと、締め付けられる腕の力に、ルルーシュが本気で苦しがっていることにも、気づいていない。
ジェレミアの腕の締め付けから逃れようと、必死にもがくルルーシュの顔から徐々に血の気がなくなっていく。
しかしそれも、暗がりの中ではジェレミアにわかるはずがない。
抵抗する力が感じられなくなって、ジェレミアが腕を離した時には、ルルーシュは半分意識を失っていた。
閉じかけた瞳を覗き込んだジェレミアは、そこでようやくルルーシュの異変に気づく。

「・・・ルルーシュさま・・・?」

恐る恐る呼びかけても、弱く浅い呼吸を繰り返すばかりで、ルルーシュはまったく反応を返さなかった。
自分のしでかした恐ろしい失態に気づき、ぐったりとしたルルーシュを目の前にして、ジェレミアは狼狽することしかできない。
圧迫されて収縮した気道を広げようにも、ルルーシュの身体を抱き起こすことすら、ジェレミアには躊躇われた。
思いもよらない事態に、酔いは完全に醒めてしまったとは言え、混乱する頭ではどうしていいのかわからない。
それでも、少しずつルルーシュの呼吸が落ち着き始めると、ジェレミアは冷静さを取り戻した。

「・・・も、申し訳ございません・・・」

泣きそうな声で謝罪するジェレミアを、ルルーシュはまだぼんやりとした瞳で見上げている。
居た堪れず、ジェレミアが顔を背けると、その襟元をルルーシュの手が弱い力で掴み上げた。

「お前・・・俺を殺す気か・・・?」
「い、いえ・・・そのような、つもりは・・・」
「・・・力の加減を忘れるなと、いつも言っているだろうが!」
「も、申し訳ございません・・・」
「・・・お前、酒臭い。酔っているんだろう?」

酔いは醒めてしまったが、ジェレミアから酒気は消えていない。

「・・・酔っぱらうと、お前はいつもこうなのか?」
「は・・・?そ、それは・・・」
「酒に酔うと、お前は誰かれ構わず押し倒すのかと言っているんだ!」
「ち、違います!わ、私は・・・」

誰でもいいと言う訳ではなかった。
ジェレミアはルルーシュが欲しかっただけなのだ。
しかし、それを言葉にできずに、ジェレミアは口ごもる。
徐々に感覚の戻ってきたルルーシュの手が、ジェレミアの襟元をぐいと引き寄せた。

「言いたいことがあったら、はっきりと言え!」

そう言われても、ルルーシュに睨まれたジェレミアは言葉を続けることができない。
ルルーシュに怒鳴られる度に、ジェレミアは怯えたような顔をして、言葉を飲み込んでしまう。
そして、それは今もそうだった。
黙ったまま俯いて、ルルーシュの機嫌が直るのを、じっと待っている。
諦めたようなルルーシュの溜息が聞こえて、掴まれたジェレミアの襟元から手が離された。
力をなくして落ちていくルルーシュの手を目で追って、ベッドの上に投げ出されたそれを、ジェレミアは黙って見つめている。
それに構わず、背中を向けようとしたルルーシュの腕を咄嗟に掴んで、ジェレミアはさっきまで見つめていた手を、両手で包み込むように握り締めた。
握り締めたルルーシュの手を、柔らかい力で撫で擦りながら、その手を自分の頬に宛がう。
触れている感触はあっても、ジェレミアの無機質な手では、ルルーシュの温もりまでは感じられない。
頬に伝わるルルーシュの体温に、ジェレミアは安心したような穏やかな表情で瞼を閉じた。
自分の手に、頬をすり寄せるジェレミアを、ルルーシュは黙って見つめている。
ジェレミアは、その視線にも気づかないほどに、頬に感じるルルーシュの手の感触に浸っていた。

「・・・お前、ひょっとして・・・欲求不満なのか?」
「・・・・・・・・・は!?」

突然のルルーシュの言葉にジェレミアは驚いて、閉じていた瞳を見開く。
ジェレミアの顔をじっと見つめているルルーシュの視線に気恥ずかしさを感じて、ジェレミアは思わず顔を赤くした。

「俺が構ってやっているだけでは足りないのか?」
「あ、あの・・・」

焦りまくっているジェレミアに、ルルーシュはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。
ルルーシュはジェレミアが欲求不満だと、完全に思い込んでいるようだった。

「なんだったら、女を紹介してやるぞ?どんな女が好みなのだ?」
「そ、それは・・・その、・・・そうではなくて・・・」
「若いのがいいのか?それとも・・・ヴィレッタのような大人の方が好きなのか?・・・ああ、言っておくが、あいつは駄目だぞ。もう嫁ぎ先がほぼ確定している。諦めた方がいい」
「え・・・ええッ!?い、いつの間に・・・!?」
「お前のいない間に、うちの扇が手をつけてしまったらしい・・・。だから諦めてくれ」
「ちょ・・・ちょっとお待ちください!諦めるもなにも・・・わ、私は別にヴィレッタのことなど・・・」

ジェレミアはヴィレッタを女性として意識したことは一度もなかった。
男勝りで気の強いヴィレッタに、男ができるとは思ってもいなかったのだ。
嫁の貰い手など絶対に現れないと、ジェレミアは確信を持っていた。
だから、本当にヴィレッタのことなど、ジェレミアはなんとも思っていない。
ルルーシュが勝手に、ヴィレッタとの関係を勘繰っているだけなのだ。

「なんだ?そんなにショックか?」

確かに、ルルーシュの口から出たヴィレッタの話は、ジェレミアには衝撃的だった。
しかしそれは、絶対に嫁に行き遅れると思っていたヴィレッタに、先を越されてしまったという事実が衝撃的だっただけで、ヴィレッタを他の男に取られたからでは決してない。

「ルルーシュ様は誤解をなされています。・・・私には、ルルーシュ様がいれば、それだけで充分です」
「・・・それは、残念だったな・・・。俺は男だからお前とは結婚できないぞ」
「あ、当たり前ですッ!!」
「俺の傍にいるつもりなら、お前はこの先一生俺の玩具だ。それでもいいのか?」
「構いません・・・」

そう言った後で、ジェレミアは自分が「臣下」から「玩具」に格下げされてしまったことに気がついた。
しかし、それに気づいたところで、「やっぱり嫌だ」とは今更言えない。
そんなジェレミアを見て、ルルーシュは愉しそうに笑っている。

「玩具なら玩具らしく、大人しく俺に遊ばれていろ」
「ルルーシュ様!」
「ま、そーゆー訳だから、俺は寝る!いいか、絶対に寝込みを襲うような真似はするなよ!?欲求不満の性欲処理なら外で済ませて来い」
「い、嫌です!私はルルーシュ様が、いいんです」
「・・・我侭を言うな。今日はお前と遊ぶつもりはない」
「わ、私もルルーシュ様に遊ばれるつもりはございません!今日は違うんです!!」
「なにが違うというんだ!?」
「で、ですから・・・その・・・、私が、ルルーシュ様を・・・」

言いかけたジェレミアの言葉に、ルルーシュはぎょっとした。
ジェレミアはルルーシュを本気で抱き倒すつもりでいるのだ。

「ふ、ふざけるな!馬鹿も休み休み言え!!な、なんで俺が・・・お前に抱かれなければならないんだ!?」
「ふざけてなどいません。私は本気です!」
「・・・な、なおさら悪いッ!大体お前、男を抱いたことなんかあるのか?」
「女性となら、間違いなくルルーシュ様よりは・・・」

さらりと、痛いことを言うジェレミアに悪気はない。

「お前ッ、俺を女と同じ扱いをする気か!?」
「いえ・・・そ、そのようなつもりは、ありませんが・・・」
「お前がそこまで言うのなら、自分の立場というものをわからせてやる」

怒りを露にしながら、ルルーシュは横たえていた身体を起こして、ジェレミアを押し倒しかけた。
しかし、その腕をジェレミアが掴み、押し倒そうとするルルーシュを軽くかわして、逆にその力を利用するようにしながら肩を押して、ルルーシュの身体を意図も簡単にベッドの上にうつ伏せ状態にして押し付ける。

「このようなことはしたくはないのですが・・・」

そう言いながら、ジェレミアはルルーシュの身体を掴んだ手に力を入れた。
ルルーシュがどんなに足掻いたところで、その力には到底敵うものではない。
屈辱と痛みで顔を歪ませたルルーシュの項に、ジェレミアのくちびるが触れると、抵抗が一層増した。
困ったように、ジェレミアが顔を上げる。

「ルルーシュ様・・・そろそろ諦めてはいただけませんか?あまり暴れられるとお怪我では済みませんよ」
「なら、手を離せ!」
「離したらお逃げになるおつもりなのでしょう?」
「当然だ!」
「でしたら、しかたありません・・・」

肩をを押さえつけているジェレミアの手の力が弱まったのを感じて、ルルーシュはジェレミアが諦めてくれたのだと思い、少しだけ安堵した。
しかしそれは一瞬だけのことで、掴まれた腕を強く捩じ上げられて、ルルーシュはその激痛に顔を歪める。

「い、痛ッ・・・」
「少しだけ我慢してください」
「な、なにを・・・する・・・ッ!?」
「ルルーシュ様がこれ以上お暴れになれないように、肩の関節を外させていただきます」
「や、止めろ!」
「大丈夫です。後で元に戻しますから」

うつ伏せに押さえつけられているルルーシュからは、ジェレミアの表情は見えなかったが、声はぞっとするほど冷静だった。
その言葉が本気であることを示すように、ジェレミアは更に力を加える。
ギリギリと肩が軋むのを感じて、ルルーシュは終に音を上げた。

「ジェレミア・・・も、もう、抵抗、しないから、手を離してくれ・・・」
「お逃げになりませんか?」
「・・・に、逃げない」
「大人しくして、くださいますか?」
「・・・する」

痛みから逃れる為なら、屈辱だの自尊心だのと言ってはいられない。
諦め切ったルルーシュの顔を覗き込んだジェレミアは、嬉しそうに微笑んでいる。
その無邪気な笑みに、さっきまでの凶暴さは、微塵も感じられない。
ルルーシュは何かがおかしいことに気がついた。
ジェレミアの顔つきはいつもとあまり変らなかったが、行動が尋常ではなかった。
普段どおりの忠実な態度を示したかと思えば、ルルーシュの言葉に逆らってみたり、躊躇うような仕草を見せたかと思えば、急に暴力的になったりと、とにかく、感情の起伏が激しいのだ。
そして今度は、甘えるようにルルーシュの背中に擦り寄っている。
どう考えてみても、行動に矛盾が多い。

「・・・お前、どれくらい飲んだんだ?」
「缶のビールを5・6本・・・」
「それだけか?」
「日本酒を五合ほどと、ワインのフルボトルをニ本・・・それから・・・」
「まだ飲んだのか!?」
「ウィスキーの水割りと焼酎をロックで何杯か・・・」

それだけ飲めば、泥酔するには充分だ。
顔には出ていなくても、ジェレミアは明らかに酔っている。
ルルーシュは呆れた。
しかし、今ジェレミアを叱りつけても、まともな理解力があるとは到底思えない。
小言はあとでたっぷりと言ってやるとして、今は背中で懐いている酔っぱらいを何とかすることが先決だった。
そうは言っても、無防備なベッドの上では武器になるようなものは、見当たらない。
策略を巡らそうにも、今のジェレミア相手では、行動がまったく読めないのだから、それも無駄のような気がする。
どう考えても諦めるしかなかった。
もし相手がジェレミアでなかったら、こんなに簡単に諦めることなどはしなかったのだろうが、ルルーシュはジェレミアが嫌いではない。
溜息を吐いて、自ら身体を仰向けにしてジェレミアを誘うように抱き寄せると、くちびるを重ねた。
どうせやるなら、主導権は自分が握っていたかった。
短い口づけを交わして、重ねられたくちびるを離すと、ジェレミアは満足そうな顔でルルーシュを見下ろしている。

「・・・やっと、私をお求めになってくれたのですね」
「ちゃんと、加減はしてくれよ・・・?」
「わかっております。ルルーシュ様を、大切に・・・大切にお扱いいたします」

言われて、ルルーシュは少し恥ずかしそうに顔を背けた。
その首筋に顔を埋めながら、ジェレミアは壊れ物でも扱うように、ルルーシュの身体を優しく抱きしめる。
ルルーシュのパジャマのボタンを上から順番に外して、首筋から開かれた胸へとジェレミアのくちびるが滑るようになぞっていく。
くすぐったい感触に身体を捩じらせると、ジェレミアは堪り兼ねたかのようにルルーシュの肌をきつく吸い上げた。
あれだけのアルコールを摂取したにも関わらず、ルルーシュの内腿に触れているジェレミアの下肢は、厚い生地越しにでもはっきりとわかるくらいに起ち上がっている。
それとは対照的に、ジェレミアはルルーシュの素肌に頬を寄せて、すりすりと無邪気な仕草で胸に頬ずりをしている。
酔っぱらいのちぐはぐな行動に、ルルーシュは苦笑を浮かべた。
しかし、それも束の間のことで、ルルーシュの胸にあるジェレミアの動きがぴたりと止んだ。
ルルーシュの身体にかかるジェレミアの重みがズンと増して、ルルーシュは訝しげに自分の胸の上にあるジェレミアの顔を覗き込んだ。
顔に掛かる邪魔な髪を掻き上げて、その表情を見れば、ルルーシュの左胸にぴたりと耳をつけたジェレミアは幸せそうな顔で瞼を閉じている。
すうすうと、規則正しい呼吸の音は、紛れもなく寝息だった。

「・・・ジェレミア?」

声を掛けても、まったく目を覚ます気配はない。
その重い身体を揺すっても、無反応のまま、ジェレミアは気持ちよさそうに眠りこけている。
折角やる気になりかけていたルルーシュは、ムッと顔を顰めて、自分の上にあるジェレミアの身体をどうにかベッドの端に転がすと、背中を向けた。が、なにを思ったか、突然身体を起こしてベッドから降りると、部屋の奥のクローゼットの中を漁る。
戻ってきたルルーシュの手には、予備の毛布が握られていた。
それを眠っているジェレミアに無造作に掛けて、ベッドの中に戻ったルルーシュは、今度こそ本当に眠る為にジェレミアに背中を向けた。